大判例

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前橋家庭裁判所桐生支部 事件番号不詳

少年 M(昭二〇・八・五生)

勧告

本籍 群馬県山田郡○○町大字△△××番地

住居 貴少年院在院中

M(昭和二〇年八月五日生)

右少年は昭和三十六年七月十三日当裁判所において特別少年院送致の決定を受け、現在貴少年院に在院中のものであるところ、当裁判所は昭和三十七年二月二十一日右少年の動向を観察し、調査官をして少年の家庭環境を調査せしめた結果、少年審判規則第三八条第二項に則り次のとおり勧告する。

主文

少年の短期仮退院は少年の更生が確実であり、且つ、後記諸点について相当の見透しがない限りはこれを避くべきである。

仮退院をさせ少年を社会に復帰させる場合少年の帰住地として○○の地を避けること、その場合保護団体による補導等の措置が望ましい。

理由

一、本件送致決定の非行事実は強姦致傷・強盗強姦・恐喝・同未遂、窃盗未遂でいずれも悪質犯であるところ、前二者は特に事案極めて残忍重大であつて、本来重刑(最低七年以上の法定刑)を以て処罰せられるべきところである。少年は非行時偶々十六年未満(二月不足)であつたので法律の規定上検察官送致ができなかつたにとどまる。少年のこれまでの生育歴・素質、群馬学院・初等少年院在院を経て収容ずれしていること、仮退院後間なき非行であること、非行の態様・回数を併せ考えると、少年の反社会性は極めて強度であつて、決して右非行は偶然のものではなく、その歪んだ性格の矯正のためには相当期間の厳格な訓練と再教育を必要とするものといわなければならない。少年にその犯した罪の重大性を悟らせ道義的責任を感じさせることこそ更生への第一歩と思われるのであるから、短期間の少年の表面的行動のみによつて安易に少年の将来を即断してはならないものと考える。

二、右非行は窃盗未遂一件が桐生市内で行われたのを除き他はいずれも○○において敢行されており、その残忍性は当時○○地方を震憾せしめたことは推測に難くない。少年を僅か一年位の短期間の収容で狭い○○に復帰させることは社会のためにも少年の更生のためにも適当ではない。これまで担当保護司等の少年に対する考え方は稍々少年の表面から受ける感じに左右され、又社会を甘くみて安易にすぎたものといわなければならず、添付の調査報告書記載の同保護司の現在における意見また同様と評さざるをえない。このような考え方では再び保護観察の失敗をまねくであろう。狭く平穏な一地方の町において少年の犯した如き犯行は決して忘れ去られるものではなく、社会の少年に対する冷たき抵抗の強度なことは銘記せられるべきである。

三、少年の父は△△市内に土地を購いささやかな仕事をはじめたとのことであつて、仮に少年を同所に住まわせ父の許で働かせることができるにしても、△△市と○○とは近距離である上、○○の家も依然として存しているのであるから、結局少年が○○に帰住してしまうのではないか、又少年が父と終日を共にして果してその生活とその職とに安定し持続しうるものであろうか否かをよく見きわめることが必要である。この点についても少年の生育歴・素質等に照し楽観は厳に慎むべきである。

少年の在院中の成績等に加うるに以上の点を御配慮の上処遇決定されることを期待し、主文のとおり勧告する。

添付書類

一、家庭裁判所調査官作成調査報告書一通

昭和三十七年四月十日

前橋家庭裁判所桐生支部

裁判官 松沢博夫

小田原少年院

院長 平沼文男殿

別紙

原審決定(前橋家裁桐生支部 昭三六・七・一三決定)

主文

少年を特別少年院に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は

第一、昭和三十六年二月十五日午後七時四十五分頃、山田郡○○町大字△△××番地、○○営林署職員○田○二方へ強盗の目的で侵入し、マフラーで覆面して土足のままで座敷に上り込み、金品を物色中、留守居をしていた右○二の妻○田○子(当三十年)に「どこから入つて来た」と云われるや、にわかに劣情を催し、同女に対し「そんなことはどうでもよい、そこに寝ろ」と云つて同女を同家八畳の間の布団の上に押し倒し馬乗りとなり「目をつぶれ、手を伸せ」などと申し向けて、嫌がる同女の乳房をもみ、ズボンズロース等を、引きちぎつて脱がせ、その反抗を抑圧した上、強いて姦淫を遂げたがその際同女は「なんでもやるから勘忍して呉れ」と哀願すると「そんなら金を千円寄こせ」と申し向け同女がタンスから現金千円を出すと更に「今千円寄こせ」と云つて同女から千円札二枚計二千円を強奪し

第二、(一) 同年五月八日午前八時頃、山田郡○○町大字△△関東化成工場東側道路上において、折柄登校のため同所を通行中の○○小学校四年生、○沢○(当九年)同六年生○塚○男(当十一年)同二年生大○○雄(当七年)の三名を認め、同所から約三十米位北方の上毛電鉄踏切附近に至つて「おーいお前逹は金を持つているか持つていたら俺によこせ、俺は腹が減つているのだ」と申し向け、同人等は「ない」と答えるや「何ない、それなら俺が調べて見るぞ」と申し向けて脅迫し右大○○雄の身体捜索をして五円銅貨二個を取り出して同人からこれを喝取し

(二) 同年六月九日午前七時三十分頃、同町大字○○字△△通称△△新道において、折柄自転車で登校中の○○小学校六年生、○永○(当十二年)に対し「おい一寸待て」と自転車から降し「金を持つていたら出せ」と申し向けて脅迫し、畏怖した同人から五十一円を交付させてこれを喝取し

(三) 同日午前七時四十分頃、前記場所附近の道路上において、登校中の○○中学校一年生、○永○一(当十二年)に対し、自転車を押えて「おい草履を持つているか、金があるか」等と申し向けて、若し出さなければ如何なる危害をも加えかねない態度を示して同人を畏怖させ、因つて同人から二十円を交付させてこれを喝取し

(四) 同日午前七時五十分頃、前記△△新道から、××橋方面に五、六米位入つた道路上において、同所を通行中の○○小学校五年生、○永○夫(当十年)に対し「おいお前は草履を持つているか、金があつたら俺によこせ」と申し向けて、同人を畏怖させ金品を喝取しようとしたが同人はこれ等のものを何等所持しなかつた為その目的を遂げず

(五) 同日午前七時五十五分頃、前記場所附近の△△新道を進行中の○○中学校二年生、○藤○(当十三年)に対し、自転車から降ろした上で「おい草履があるか、金を持つているか」と申し向け「ない」と答えるや「この野郎うそを云うな」と云い乍ら、同人の着衣をさがし「あるではないか」と申し向けて、同人を畏怖させ、因つて同人から百円を交付させてこれを喝取し

第三、(一) 昭和三十六年三月一日頃の午後一時頃、桐生市○○町××番地飲食店△△こと○沢○雄方裏物干場から同人所有の子供靴下一足とパンテイ一枚を取つて室内を物色中家人に発見されたため結局目的を遂げず

(二) 同月二十四日午前十一時頃、山田郡○○町大字△△××番地農業阿左美辰二方において窃取すべく金品を物色中家人に発見されてその目的を遂げず

第四、昭和三十六年六月九日午前十時頃、山田郡○○町大字△△××番地○藤○雄方裏手から屋内の様子を窺つたところ、同人の長女○藤○代(当十八年)が奥六畳の間で単独で留守居をしていることを認めて劣情を催し同女を姦淫しようと決意し表玄関から屋内に入つて勝手場にあつた文化庖丁と茶の間にあつた浴衣を持つて奥六畳間に至り突然同女の後方から右の浴衣を冠せ、首を絞めてその場に押し倒し、両手を縛り上げる等の暴行を加え所携の庖丁を示して「静かにしろ騒ぐと殺すぞ」と申し向けて脅迫し、同女のズボン、ズロース等を破つて引きおろしたが同女が抵抗して右六畳の間の北から裏庭へ飛び出るやその後を追いかけ同家裏軒下で同女を捕え、その場に押し倒し更に「騒ぐと殺すぞ」と申し向けて脅迫し石で頭部等を殴打するの暴行を加え、同女の反抗を抑圧した上、強いて姦淫を遂げたものであるが、その際同女に対し処女膜裂傷全身各部の打撲擦過傷及び皮下出血、右腕手背部裂傷等全治五日間を要する傷害を負わせ

たものである。

(法令の適用)

第一の事実につき刑法第二百四十一条前段

第二の(一)ないし(五)の事実につきいずれも刑法第二百四十九条第一項なお(四)は右の未遂につき同法第二百五十条

第三の(一)、(二)の事実につき、いずれも刑法第二百四十三条、第二百三十五条

第四の事実につき刑法第百八十一条、第百七十七条

(要保護性)

少年は昭和三十四年十二月二十二日当庁において窃盗、遺失物横領、強制猥褻、軽犯罪法違反等の保護事件で初等少年院送致となつたものであるが、その前にあつても既に教護施設群馬学院に収容されており窃盗犯罪については習性化の傾向が強く、本件各非行は仮退院後間もなくして始まり何等心的の抵抗なく無反省に反覆されているのであつて、特に第一、第四の強盗強姦、強姦致傷の行為は成人も一目おく程の悪質のもので、精神病質的傾向を如実に物語つて居り危険極まるものがある。よつて厳正な生活訓練を与えると共に強度に性格の矯正を施す要があると認め少年法第二十四条第一項第三号、少年院法第二条第四項、少年審判規則第三十七条第一項後段を適用し主文のとおり決定する。

(裁判官 石川季)

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